日本生活中心教育研究会では、2016年2月27日(土)に開催しました理事会・総会を経て、小出進先生が示された「生活中心教育20箇条」を日本生活中心教育研究会の「基本理念」とすることを決議しました。
生活中心教育が大切にすべき、子ども主体の生活づくりの基本理念を、日本生活中心教育研究会の「基本理念」として共有することとしました。
この「基本理念」を心とし、自由で、多様で、豊かな実践を展開していかれればと願っています。
「基本理念」は、実践に枠をはめ、縛るためのものではありません。そうではなく、実践者一人ひとりの自由で、多様で、豊かな発想や実践の源泉となることを期待し、本研究会の基本理念としました。この「基本理念」を根幹とし、自由で、多様で、豊かな実践が幹を太くし、葉を広げていくことを願います。
「基本理念」の心に学び、共感し、実践の充実・発展のための力としていただきければと願っています。
決して、「基本理念」を固定的にとらえないことが大切です。たとえば、「基本理念」には知的障害教育課程の具体についても述べられています。しかし、もとより教育課程は学校種によって多様ですし、時代によっても変化していきます。
ですから、ここでは知的障害教育課程の具体を固定化せず、そこに込めれた心に学ぶことになります。
それぞれの場、それぞれの時代において、「基本理念」に込められた心を大切にして、自由で、多様で、豊かな実践を考えたいのです。この「基本理念」から、自由に、多様に、豊かに実践を展開していく、そのための「基本理念」です。
この「基本理念」が、特別な支援を必要とする子どもに限らず、すべての子どもの教育に広がっていくことを願います。
特別支援教育の場に限らず、幼稚園から大学まで、すべての学校教育の場、さらには、家庭や福祉・医療・労働などのすべての生活の場での人主体の生活の実現を願います。小出進先生が示してくださった「生活中心教育二十箇条」に学び、自由で、多様で、豊かな実践が充実・発展することを願い、ここに「日本生活中心教育研究会 基本理念」を制定します。

  1. 生活中心教育は、自由で創造的な教育課程編成を目ざすが、それは、学習指導要領などの教育課程の基準に基づいても、十分可能である。
  2. 学校が自由に、そして創造的に教育課程を編成するには、教師一人ひとりの創意が教師集団の総意になりやすい状況がなければならない。
  3. 子どもの生活を大切にして、教育を進める立場に立つと、教育とは、子どもの生活を整え、支えて、生活の充実を図ることになる。
  4. 教育課程は学校生活の計画でもあり、教育課程の編成と実施は、学校生活づくりを意味する。学校生活づくりでは、何を教えるかということよりも、どう生活するかが課題となる。
  5. 学校生活づくりを進めるにあたって、何よりも、子どもの立場に立って、良い生活とはどういう生活かを考える。
  6. 子どもにとって良い生活とは、今日に満足し、明日を楽しみに待つ生活である。仲間や教師との共同生活で、良い生活とは、共通のテーマをもち、共に活動し、満足感・成就感を分かち合う生活である。
  7. この意味での良い生活を実現するたに、テーマのある学校生活を進める。
  8. 一定期間、一定のテーマに沿って活動し、生活できるように、小学部・小学校段階では生活単元学習を、中学部・中学校段階では生活単元学習と作業学習を、高等部段階では作業学習を、それぞれ週日課表の中心を据える。その場合、生活単元学習は、単元化した遊びを含み、作業学習は、単元化した作業学習である。
  9. こうすることで、生活単元学習、作業学習の各単元名が、学校生活のテーマとなる。一定期間、一定のテーマに沿って活動する生活単元学習と作業学習が、一日の生活の中心となり、一定期間の生活の軸となり、まとまりのある学校生活ができる。
  10. 毎日、一定期間にほぼ同じように繰り返す日常生活を、生活単元学習や作業学習の前後に配置し、その一部を生活単元学習や作業学習と自然に関連づける。
  11. こうすることで、学校生活が一段とまとまり、規則的になる。教科別、領域別の指導を設定することがあっても、その指導の生活化を図り、生活単元学習や作業学習と関連づければ、生活のまとまりと規則性を大きく損ねることはない。
  12. まとまりと規則性のある生活にすることで、生活が整えられ、子どもが取り組みやすい学校生活となる。
  13. 日常生活、遊び、生活単元学習、作業学習などの活動は、学校生活に取り組む子どもの生活活動である。その指導は、子どもの活動をより良く遂行できるようにするための支援的対応である。
  14. 生活活動を学習活動に意味づけ、位置づけても、その活動は、各教科などを教え、指導するための単なる手段ではない。生活に取り組む子どもの活動は、それ自体が目的である。生活が教育の手段ではなく、生活それ自体が目的である。
  15. 子どもの活動・子どもの生活への教師の支援は、子どもがより良く活動し、生活できるようにするための状況づくりである。子どもが精いっぱい取り組み、首尾よく成し遂げられるようにするための状況づくりでもある。
  16. できる力をつけて、できるようにするのではない。その前に、できる状況をつくって、できるようにするのである。できる力がつくまで待つのではない。できる状況をつくって、すぐにできるようにするのである。 できることを繰り返すことによって、より確かなできる力を身につけるようにするのである。より良く、より速くできるようになる過程で、子どもは、もてる力を存分に発揮し、個性的良さを示す。
  17. できる状況のもとで、子どもは、自分から活動し、自分の力で活動を遂行する。活動への自発的・自立的取り組みは、主体的活動を促し、子ども主体の生活を実現する。させられる生活を、する生活に変える。教師にこづかれ、引っぱられる生活が、子ども自身が計画し、実行する生活となる。
  18. 学校生活づくりで生活が整えられ、その生活への子どもの取り組みが、できる状況作りで適切に支えられ、自立的・主体的になれば、子どもの生活は、確実に充実する。
  19. 九年間ないしは一二年間の学校生活を充実・発展させて、卒業後の望ましい社会生活につなげる。遊びを中心とする生活を、働く活動を中心とする生活に発展させ、地域で働き、暮らす、社会生活につなげるのである。 学校生活が充実・発展する過程で、子どもは、自立的・主体的に取り組む生活を重ね、自立的・主体的に生活する力を身につける。
  20. 教師は、子どもと共感し、共に活動し、生活する、良き支援者である。