研究活動

共同研究

2024/04-2027/03 「みんなの大学論に向けて 」
2023/04-2026/03 「国際秩序の変容と再構築を考える」
2023/04-2026/03 「台湾先住民族による創作的文化蘇生の実践について―若者たちの表現行動を中心に」
2022/04-2025/03 「『世界音楽』の現在」
2022/04-2025/03 「日本における宗教の定着について考える」
2021/04-2024/03 「エコキャンパスプロジェクト」
2021/04-2024/03 「宗教的境界の変容―空間と他者認識を中心に―」
2021/04-2024/03 「途上国の経験からみた日本の農村コミュニティ開発における新たな担い手とメカニズムに関する研究」
2020/04-2023/03 「デモクラシーの多様性ー 『地についた民主主義』のありかたを考える研究」
2019/04-2022/03 「サウンドスケープと平和研究」
2019/04-2021/03 「身体フェミニズムと先住民フェミニズムから考察する身体」
2019/04-2020/03 「福島第一原発事故避難者の研究」
2018/04-2021/03 「食用油脂の学際的理解に向けた基礎研究」
2017/04-2020/03 モバイルデバイス・インターネット・IRなどを活用した教育法・教材の学習成果測定と開発の総合的研究
2017/04-2020/03 エコビレッジの事例研究~ローカリゼーションによる平和な社会づくり
2016/04-2018/03 企業の社会的責任と市民の社会的関与の研究
      大学と社会をつなぐ体験的な学びの視点から
2016/04-2019/03 都市の目、都市の耳
2015/04-2018/03 雑の研究―グローバル化する世界における多様性
2015/04-2018/03 領有権問題の克服に向けて
2014/04-2017/03中国におけるエネルギー開発と環境保全の課題
2013/04-2016/03アジア・アフリカ地域における資源開発の政治経済学分析―構造調整期の再検討―
2013/04-2015/03インターンシップの運用および学習成果に関する研究
2013/04-2016/03越境する音と国際関係史
2012/04-2015/03核時代における軍縮努力:今日の人道的アプローチと非核地帯化の論理の歴史的展望
2012/04-2015/03流域文化圏形成の研究
2011/04-2014/03『排除する社会規範』を超えたコミュティづくり
2010/04-2013/03弱さの研究
2010/04-2013/03グローバリゼーションと日本における音楽演奏の変容
2009/04-2012/03南北問題の学際的研究
2009/04-2012/03海と山が醸成するアジアの文化
2008/04-2011/03中国における局地経済圏の形成と経済開発区の役割
2007/04-2010/03世界秩序の変容と国家
2006/04-2009/03GNH―豊かさという概念を問い直す
2005/04-2008/03アフリカにおける自然資源の持続的利用と地域開発
2005/04-2008/03中国社会変動における村落と家族
2004/04-2007/03家畜と人間社会
2003/04-2006/03前近代と近代社会におけるジェンダー、身体、セクシュアリティの考察
2002/04-2005/03ボランティア論の構築に向けての国際学的研究
2002/04-2005/03東アジアにおけるポスト植民地化における歴史認識とアイデンティティ形成について
2001/04-2004/03『スモール・イズ・ビューティフル』の再評価
2001/04-2002/03公共事業と漁業権に関する研究
2000/04-2003/03Small Island States Project
1997/04-2000/03「中国における発展の持続可能性」
1997/04-1999/03「冷戦後の核問題」
1997/04-1998/03「宗教と普遍主義」
1996/04-1997/03「ジェンダー文化的境界国家-理論と事例研究」
1994/04-1997/03「国際学の展望」
1994/04-1997/03「間共同体」
1993/04-1995/03“Religion, Politics, and Ethnic Violence in a South Asian Society: SRI LANKA”
1993/04-1996/03“Narrative Space, Narrative Time : Text and Image”
1993/04-1996/03「少数者とエスニシティ」
1991/04-1994/03「21世紀地球社会のパラダイム」
1991/04-1994/03「近代天皇制」
1990/04-1993/03「日本占領下の東南アジア」

 

2024年度

テーマ みんなの大学論に向けて
期間 2024/04~2027/03
代表 紺屋 あかり
メンバー 野口久美子、林公則         
目的・意義 本共同研究の目的は、日本の大学論について、マイノリティの人々や、これまで大学と深い関わりを持ってこなかった人々の視点を通して再検討することである。 1990年代以降、新自由主義的な諸政策(大学設置基準の大綱化と大学院重点化、国立大学法人化という一連の改革政策)は日本の大学に大きな影響を与えてきた。さらに近年のグローバル化や少子高齢化が、それら諸政策の影響と結びつくことによって、大学は様々な窮状を発生させている(吉見 2021:226)。吉見は、これら日本の大学の絶望的状況とその経緯を振り返りつつ、今あらためて大学のあり方を問うことの重要性を強調している(吉見 2020,2021)。しかし、吉見(情報学)による日本の大学論は、いわゆる「トップユニバーシティ」の分析に偏向したものであり、日本のマジョリティを占める中堅大学などには必ずしも当てはまらない議論も多い。また、人文社会学分野からの考察は少なく、議論の余地を多分に残している。 本共同研究の目的は、実利的な政策論(大学経営学)やカリキュラム論(教育学)からは距離をとりつつ、大学論そのものを内部、かつ多角的な視点から問い直すことを目的としている。ここではおもに、日本の持つ歴史的・政治的背景を踏まえつつ、日本の大学のあり方についての再検討を試みる。また、学生、教員、職員、地域住民など、大学に関わるあらゆるアクターだけでなく、これまで大学との関わりを持ってこなかった人々を巻き込んだ議論の場をつくることで、これからの大学とは何かを問うことの意味を共有したい。苅谷剛彦, 吉見俊哉 2020『大学はもう死んでいる?トップユニバーシティからの問題提起』集英社新書. 松村圭一郎 2019『これからの大学』春秋社. 吉見俊哉 2020『大学という理念 絶望のその先へ』東京大学出版会. 吉見俊哉 2021『大学は何処へ:未来への設計』岩波新書.
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2023年度

テーマ 国際秩序の変容と再構築を考える
期間 2023/04~2026/03
代表 孫 占坤
メンバー 高原 孝生、戸谷 浩         
目的・意義 本プロジェクトの目的は2022年2月に発生したロシアのウクライナ侵攻と益々深まる米中対立が第二次世界大戦後の国際関係の基本構造にどのよう影響を及ぼすのかを考えることである。 第二次世界大戦後の国際秩序は国連憲章で象徴しているように、主権と領土保全の尊重、武力行使の禁止、人民の自決権の尊重、人権の擁護などを基本原則としている。しかし、2022年2月に起きたロシアのウクライナ侵攻は、国連の安保理メンバーによる隣国へのあからさまな侵略であるだけに国際社会を大きく震撼させた。このような侵略を目の当たりにしながらも、米中対立が激化することで、国際社会は結束した対処を行えなかったこともまた多くの国を大いに失望させていた。貿易対立から始まった米中対立は近年、価値観、国際秩序観を含めた全面対立の様相を呈しつつある、という意味で、今後の国際秩序への影響はより大きいともいえる。 このような「新冷戦の到来」とも形容される現下の国際秩序が、今後どのような方向へ変容していくのか。いわば、国際秩序の「構造」への研究は、今後の国際平和を考える上でもはや焦眉の急であると考える。
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テーマ 台湾先住民族による創作的文化蘇生の実践について―若者たちの表現行動を中心に
期間 2023/04~2026/03
代表 青柳 寛
メンバー 浪岡 新太郎、竹尾 茂樹         
目的・意義 本研究の達成目的は主に二つある。その一つは、これまで殆ど体系的な調査がなされてこなかったアジアの島嶼列島地域における文化的グローカル化の現状―即ち、グローバルトレンドと地域特有の伝統文化の混交によって織りなされる新興的生活環境—について、新たな探究による民族誌的記述を行うこと。そして今一つは、こうした状況の分析への有用性が高い社会学のコンセプトと理論―とりわけギデンスの「再帰的近代化」—を応用することによるトランスカルチャ―の実証的考察である。 先住民族の生活環境や伝統文化の喪失に関しては、既に世界規模で各種の研究がなされている。しかし、伝統文化の再編成や蘇生と、これらに担う若者たちの役割に関しては、他地域においてそうした役割の重要性が認められているにも関わらず、詳しい調査があまりなされてこなかったきらいがある。よって、ここに新たにこうしたトレンドを把握しその内情を明らかにする事例研究の学術的な価値は十分あり得ると判断する。
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2022年度

テーマ 「世界音楽」の現在
期間 2022/04~2025/03
代表 半澤 朝彦
メンバー 平山 恵、井手上 和代、細田 晴子(日本大学商学部教授)         
目的・意義 「世界音楽(ワールドミュージック)」は、それまでの「民族音楽」のいわば代替概念として1960年代の「リベラルアワー」に誕生した。当初はR.E.ブラウンが提唱した学術用語で、脱植民地化が進行する世界にあって、既存の権威である西洋音楽、西洋的価値の相対化を図るものであった。その後、1980年代以降のワールドミュージック・ブーム(クレズマーやケルト音楽、和太鼓などが「再発見される」)、1990年代冷戦終結後のグローバリゼーションの本格的進展の中で、ネオリベラリズムによって促進される音楽の商業主義、ツーリズムへの利用、さらなるメディア技術の進歩とも結びつき、とりわけ2000年代以降は一般にも定着したといえる。  その反面、21世紀のワールドミュージックが20世紀とはかなり様相が異なる展開を示している点については学術的に十分注意が払われていない。本研究は、近年顕著になっているナショナリズム、ポピュリズム、音声メディアの個人化、音楽のさらなるグローバル化、ミュージキング概念の発展などの新しい動向に着目し、これまでのワールドミュージックの歴史を整理しながらも、いくつかの新しい視座を設定してその現代的な展開を分析するのが目的である。  本研究の意義は、B.ネトル、F.ボールマンらの研究のような「音楽学」の延長上には必ずしもない。より学際的に、国際関係論、グローバルヒストリー、帝国論、ディアスポラ研究、開発経済学、ツーリズム、地域研究、社会開発論、社会改革の実践といった多角的な立場から、ワールドミュージックの新しい動向を独自の視点で分析する。それにより、本質的に越境的でハイブリッドな性格を有する「音楽」というメディアがもつ、異質なアクター同士の相互理解、相互交流を促進させる可能性をより明確に見いだしたいと考えている。
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テーマ 日本における宗教の定着について考える
期間 2022/04~2025/03
代表 浪岡 新太郎
メンバー ヴィーシィ・アレキサンダー         
目的・意義  本研究の目的は、日本において宗教多元主義がどのように実現されているのかを検討することである。国家の中立性を原則とする日本において、どのようにマジョリティとマイノリティの信教の自由の保障において差が生じているのか、いないのか、またその差は信仰者によってどのように埋められているのかを明らかにする。 具体的にはマイノリティとして低所得移民労働者の宗教宗派としてのイスラームと南アジアの上座部仏教を、また日本人のマジョリティの、大乗仏教、神道などを含む社会を取り上げ、両者の信教の自由がどのように実践されているのかという観点から分析する。 これまで日本における多元主義研究は国内マイノリティ、あるいは移民出身者の法律的、あるいいは社会経済的問題を研究対象とすることが多かった。具体的には滞在条件、労働条件、貧困、地理的セグリゲーションなどである。本研究は、こうした研究と多元主義研究という点でアプローチが重なるが、対象として宗教問題を取り上げる。そのことで日本における多元主義研究を補完することを目指す。
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2021年度

テーマ エコキャンパスプロジェクト
期間 2021/04~2024/03
代表 林 公則
メンバー 賴 俊輔、助川 哲也、紺屋 あかり、長谷部 美佳(教養教育センター)、小口 広太(千葉商科大学)         
目的・意義  本研究の目的は、「キャンパスを知的に、そして環境の上でも芸術の上でも充実させていくこと」に資する知見を収集し、深めていくことである。  キャンパスの価値向上のための代表的な国内の取り組みとしては、「大学キャンパスにおいて、省エネルギー、CO2削減、交通計画、廃棄物対策等のハード面の環境配慮活動を更に促進するとともに、環境教育・研究、地域連携、食の課題、運営手法等のソフト面の取組も同時に実施するサステイナブルキャンパスの取組を推進し加速させ、かつ諸外国の先進的なネットワークとも連携し、もって我が国における持続可能な環境配慮型社会の構築に貢献することを目的」(会則より引用)としているサステイナブルキャンパス推進協議会の活動がある。
 サステイナブルキャンパス推進協議会の取り組みを参考にしつつ、本研究では、エコキャンパスという用語を使用する。というのは、本研究では、環境の要素よりも、多様な主体が共存共栄するエコシステム(生態系)という要素を重視しているからである。すなわち、大学のキャンパスが独立してサステイナブルな活動をするのではなく、地球環境・社会・地域の一員としての大学(キャンパス)が相互関係のなかでどのような役割を果たしうるのかを次ページに示す分野で調査・検討する。
 サステイナブルキャンパス推進協議会に加入していないフェリス女学院大学、千葉商科大学、恵泉女学園大学、玉川学園などでも、キャンパス内で魅力的な取り組みをしている。それらの個々の事例を詳細に調査・整理することを通じて、大学キャンパスの多様な可能性を明らかにできることが、本研究の意義である。
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テーマ 宗教的境界の変容―空間と他者認識を中心に―
期間 2021/04~2024/03
代表 大川 玲子
メンバー 久保田 浩、ヴィーシィ・アレキサンダー         
目的・意義 【全体】仏教(ヴィーシー担当)、キリスト教(久保田担当)、イスラム教(大川担当)という三つの宗教文化は、それぞれ独自の宗教空間と他者認識をもつとされるが、この境界は近代化やグローバル化のなかで変容している。本研究はこの変容の背景や経緯を分析し、境界の曖昧さや恣意性を解明し、学問界や日常世界で広まっている本質論的な宗教区分の再検討を試みる。
【仏教】宗教家のアイデンティティの形成過程では「聖」と「俗」の区別が想定され日本の仏教においても「修行僧」と「在家」はその定型的な例となっている。「無我」「無執着」の心境に至れるための特別な生活を送ること、寺社境内と俗世界、「娑婆」と「他世界」の様に空間を理想的に分離することがある一方で、日常生活では分離より聖俗の交流・合成の現象が多い。本研究は日本仏教史ならびに現在の社会における仏教僧の活動を中心に聖・俗の合成で形成されている宗教を分析する。
【キリスト教】歴史的にキリスト教は「正統orthodoxy」と「異端heterodoxy」という二項対立をもつが、近代西洋においては「世俗化」によって「キリスト教」の境界画定が大きく変化してきた。非西洋においても習合的・折衷的なシンクレティズムという形での「キリスト教」の新たな創造的過程が観察出来る。こうした過程を詳細に検討することを通して、宗教的境界確定の時代的・地域的条件が明らかとなり、本質論的な「キリスト教」理解を相対化する契機が与えられることになろう。
【イスラム教】一般的にイスラム教は「異教徒」に対する否定感が強いとされ、対立や紛争、さらにはテロ行為と結びつけられがちである。しかしこの研究を通してムスリム文化内の「自己」(ムスリム)と「他者」(異教徒)認識が画一的なものではないことを示し、日本におけるイスラム教理解の見直しにつなげていきたい。
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テーマ 途上国の経験からみた日本の農村コミュニティ開発における 新たな担い手とメカニズムに関する研究
期間 2021/04~2024/03
代表 重冨 真一
メンバー 賴 俊輔、猪瀬 浩平(教養教育センター)         
目的・意義  発展途上国の農村開発と比べてみたとき、日本における農村コミュニティ開発は、その内発性こそが顕著な特色であった。途上国ではコミュニティ開発がNGOや行政のリーダーシップのもとに行われることがしばしばあり、それへの反省から「参加型開発」といった理念が提唱されてきたのに対し、日本の農村では住民が外部者のリーダーシップで動くことはむしろ希であった。それは日本の農村地域社会の中に住民の合意形成と集合行為、リーダーを導き出す仕組みが備わっていたからである。
 しかし高齢化と人口減少の進む日本の農村社会では、これまでのように内発的な組織能力に期待できなくなってきている。そもそも開発の担い手となる人の母集団が縮小してしまっているし、高齢化した農村住民だけで変化の早い外部環境に対応していくのは困難になってきている。そのため、日本の農村地域社会も外部者の能力に依存しなければならない状況になっている。「地域おこし協力隊」のようなものが制度化されたのは、まさに日本の農村でNGO的な主体の関与が必要になったことを示している。途上国における農村開発が経験してきたことが、現在、日本の農村開発に適用できる状況が生まれているのである。
 このように日本と途上国の農村開発問題はかなりの共通性をもってきており、相互に経験を交流させることができる状況になったといえよう。日本の農村地域における地域おこしについて途上国で蓄積してきた外部者の関与の経験がどう適用できるのか。逆に日本の地域おこしで起きていることが、途上国の参加型農村開発にどう適用できるのか。これらを検討し、相互に政策的な含意を発見するのが、本研究の目的であり、社会的意義である。
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2020年度

テーマ デモクラシーの多様性 「地についた民主主義」のありかたを考える
期間 2020/04~2023/03
代表 孫占坤
メンバー 阿部 浩己、戸谷 浩、趙 星銀、孫占坤、勝俣 誠(本学名誉教授)、渡辺 祐子(教養教育センター)
目的・意義  近代欧米市民革命や独立戦争、更に20世紀の両大戦を経て、民主主義は国際社会全ての国家、民族にとって適用されるべき「普遍的思想・制度」となったように見受けられる。冷戦終了後、「民主主義国家同士は戦わない」等が声高に叫ばれ、国際法、政治学、平和研究等の学問領域において、民主主義的な国家づくり等の研究が熱心に行われ、現実の国際関係においても、「人道的介入」、「人間の安全保障」等の議論とも絡めて、国連や(西側)大国主導の介入、民主主義的「国家再建・政府再建」活動が世界の各地域で繰り返されてきた。 しかし、近年、世界で進行している幾つかの動きが「民主主義とは何か」を我々にその再考を迫るような呼びかけをしているようにも思える。例えば、米英をはじめ、「成熟」する西側民主主義諸国に見られる一国主義的な諸動き、アラブ・中東における民主主義体制づくりの挫折、中国における権威主義体制の強化(経済発展に伴う民主主義の停滞・後退)など。 本研究は近年の世界におけるこれらの動きを単に「民主主義の後退・死」とは悲観視せず、「民主主義の多様性」という視点から民主主義のあり方を改めて検討する試みである。民主主義の普遍性の意義を念頭に置きつつ、その多様性にも光を当てることで、今後の国際社会における民主主義強化の可能性や方法を探りたい。
活動報告 『研究所年報』第26号 最終報告書

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2019年度

テーマ サウンドスケープと平和研究
期間 2019/04~2022/03
代表 半澤 朝彦
メンバー 阿部 浩己、細田 晴子(日本大学商学部准教授)
目的・意義  近代を通じての(広義の)グローバリゼーションに伴い、他の文化領域から独立した「音楽」概念が絶対化されてきた面がある。サウンドスケープは、これを相対化するために、ランドスケープ(風景)という言葉のアナロジーから、カナダの音楽学者・作曲家のマリーシェーファーが一九六〇年代に唱えた概念であり、「音環境」「音風景」などと訳す。近代化の中で、音が周囲の環境から切り離され、楽音中心の「サウンド主義」に陥ってきたことを反省し、もう一度、音を社会や環境との関係性の中でとらえようとする考え方である。 とはいえ、現状のサウンドスケープ研究は、都市環境の整備、町おこしといった政策面、ないしは趣味的な実践に重点が置かれすぎ、学問的な考察が十分に進んでいないきらいがある。「音楽」概念の絶対化がとりわけ都市化・商業化と深く関連している点については、これまでの国際学部付属研究所での共同研究により明らかにされた。本研究の目的は、そうした研究成果を踏まえ、より焦点をしぼって、サウンドスケープとグローバリズム、暴力や平和との関係を考察することである。日本平和学会においても、音楽を含む文化の平和への貢献が近年ますます注目されている。平和研究、グローバリゼーション研究の中でサウンドスケープを捉え直す。 本研究の意義は、まず、グローバル化研究や平和学において(他の社会科学の領域同様に)等閑視されてきた音(楽)の政治社会的な意味を多面的に考察し、相対的に研究が進んでいる視覚的表象に関する知見と統合を図ることである。第二には、サウンドスケープを焦点に据えることによって、グローバリゼーション研究を立体的にし、アナール学派などソフト面に注目する歴史学とも接合を図れる。平和研究、政治学、歴史学のフロンティアを広げたい。 また、この研究は、「町おこし」「地域おこし」を実践的・理論的に考察することによって、単なる観客動員や啓蒙的イベントにとどまることのない、新しいタイプの地域政策提言につながるほか、明治学院大学の研究・教育・勤務環境の改善に貢献し、広く社会に新しいライフデザインを発信するきっかけとなる可能性がある。
活動報告 『研究所年報』第25号 最終報告書

テーマ 身体フェミニズムと先住民フェミニズムから考察する身体
期間 2019/04~2021/03
代表 合場 敬子
メンバー 野口 久美子
目的・意義  本研究の目的は、合場(2013)が提唱した「身体フェミニズム」の思想と実践を、女子高生の身体研究と野口が探求する「先住民フェミニズム」の思想から深めることである。女子高生の身体は、自己の身体をダイエット、化粧、体毛の処理などを通じてどのように構築し、それを認識しているか、もう一つは、高校になってから顕在化する女子の運動離れの原因の探求の2つの側面から考察する。 90年代から摂食障害(浅野、1996)、美容整形(谷本, 2008)、男性の頭皮に関する悩み(須永, 1999)などの理想の女性/男性身体に関する研究が行われてきているが、日本のジェンダー研究やフェミニズムの中では、それらは継続的に探究されてこなかった。また、学齢期の女子の運動離れについても、井谷(2009)が分析しているが、日本のジェンダー研究やフェミニズムの中では重要な問題として認識されていない。したがって、本研究で女子高生の身体をめぐる問題を探求することは、日本のジェンダー研究やフェミニズムにおいて、身体研究の重要性への認識を広げることに貢献する。次に、女子高生の身体は日本のアニメなどのメディアで、短いスカートを履き、時にかわいく、時にセクシーに表象されたり、いつも前向きでダイエットをファションのように実践しているように語られてきた(例えば、中村, 2004)。しかし、今を生きる女子高生が自分の身体に対してどのような認識を持ち、どのような問題に直面しているかは、学術的にほとんど考察されていない。本研究ではその点を考察することで、今を生きる女子高生が直面する身体に関する問題を明らかにし、その解決策を考えることに貢献する。日本における先住民研究では、先住民文学での成果を除き、先住民フェミ二ズムに関する歴史的考察が十分に行われてはいない(野口, 2016)。これは、1970年代以降の先住民復権運動における先住民女性の主張(養子、強制断種問題、身体への暴力への抗議)の意義を見落とし、運動における女性の貢献を矮小化する結果につながった。本研究では、まず先住民復権運動における女性の主張を突破口として、現代の先住民女性が直面している「身体的暴力」について考察し、さらには、そうした暴力を生み出した歴史的過程について、先住民社会の伝統的な「身体」の解釈と、国家による帝国主義的政策の両面から分析していく。本分析は、マイノリティの身体が特定のコミュニティ、社会、国家からの要請(暴力)を受けてどのように変貌し、あるいはそれに対し、当事者がどのように反発、適応してきたのかについての事例を提示し、合場の研究に比較・理論的視座を与えるものとする。
活動報告 『研究所年報』第24号 最終報告書

テーマ 福島第一原発事故避難者の研究
期間 2019/04~2020/03
代表 トム・ギル
メンバー マイケル・ワトソン、浪岡 新太郎
目的・意義  福島第一原発事故とその被災者に関して文献はすでにたくさんあるが、被災者の様々な経験を整理して分析する論集はまだ見当たらない。このプロジェクトは自主避難者と強制避難者、県内避難者と県外避難者、豊富な賠償金をもらった避難者とほとんどもらわなかった避難者、仮設住宅に住む避難者と借り上げアパートに住む避難者などと、避難者の経験の全体図を提供してその意味を探ることにある。今までの研究はどうしても限られた避難者の一種に偏っているから、このプロジェクトは福島第一原発事故の理解に大きく貢献ができるという意味で、意義がある。
活動報告 『研究所年報』第23号 最終報告書

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2018年度

テーマ 食用油脂の学際的理解に向けた基礎研究
期間 2018/04~2021/03
代表 賴 俊輔
メンバー 平山 恵、平賀 緑(立命館大学非常勤講師)
目的・意義  本研究プロジェクトでは、食用油脂について、経済学、歴史学、栄養学など、さまざまな側面からアプローチすることを目的としており、そのための基礎的な作業を行う。
食用油脂自体は経済学や農業経済学のなかで必ずしも十分な研究がなされてきているわけではなく、あったとしても、原料である油糧作物(大豆・ナタネなど)の生産や流通に焦点を当てた研究がほとんどである。
油は、人間にとって必須の栄養素と言われるが、『フードトラップ:食品に仕掛けられた至福の罠』に描かれているように、現在のフードシステムにおいて砂糖と並び生活習慣病の要因の1つと見なされ、また人間の食べ物の嗜好を操作しうるとも見なされている。油糧作物の生産や流通だけでなく、油脂自体の供給や消費を増大させてきた要因を分析の射程に入れることにより、経済学と栄養学や歴史学などとの学際的な研究が可能となり、食用油脂についての新たな見方を獲得できる。
従来の経済学では、食べ物を摂取することは、「消費」行動として、消費者の主体的な行動の結果として受け止められることが通常であるが、近年の脳科学・神経科学では、食用油脂の摂取により、脳における、空腹と口渇に関する領域および、快感を生み出す報酬中枢が刺激されることが分かってきている。現代資本主義社会における消費社会の拡大を考える上で、高度な食品化学を駆使した多国籍企業の市場戦略が、個人の嗜好をどのように、どの程度変化させているかは、重要な課題であると考えられる。

 経済学のなかでは、ヴェブレンやガルブレイスに代表される制度派経済学が、市場取引における売り手と買い手の情報の非対称性に着目し、企業の広告宣伝がいかに消費を喚起しているか(依存効果)に着目しているが、こうした制度派の視点も踏まえつつ、研究を進める。
活動報告 『研究所年報』第24号 最終報告書

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2017年度

テーマ モバイルデバイス・インターネット・IRなどを活用した教育法・教材の学習成果測定と開発の総合的研究
期間 2017/04~2020/03
代表

秋月 望(~2018/03)、竹尾 茂樹(2018/04~2020/03)

メンバー 田中 桂子、Alexander VESEY、岩村 英之、李 嬋娟、趙 星銀、秋月 望(元本学教授)
目的・意義  学部学生の入学時から卒業にいたる学修過程において、どのようなエビデンスによって学生の学びと成長に資することができるのかを検証する。大学教育の質保証が問われる今日、3ポリシーの実質化、また学生の学修成果の可視化を図ることを通じて、本学部の教育の成果を見直し、かつ改善の方法を示唆することを目的とする。
 このような教育と連結した研究は、教学改革が喫緊の課題である大学の現状に照らして、本学部の教育・研究の維持と改善において必須であると考える。
 具体的には事前事後学習の活性化、アクティブラーニングの推進などを念頭に置きつつ、その実践的な試行を行い、学習成果を測定することにより、今後の国際学部の教育の一つの方向性を模索する。それとともに、外部の研究・教育補助の申請に即応出来る内部的な教育と研究両面にわたる実績と経験を蓄積することを目的とする。
 その際には、系列校・連携強化校などとの高大接続のプログラムの効果測定、MISSIONのデータ解析、e-Learningのログデータ、入学後のGPA・TOEFLスコア等、学内のIRとの連携、あるいは学生調査の実施などの分析手法を取り入れる。
 研究の進行によって、本学部だけでなく他学部との連携・協力関係を構築することも目的とする。
活動報告 『研究所年報』第23号 最終報告書

テーマ エコビレッジの事例研究~ローカリゼーションによる平和な社会づくり
期間 2017/04~2020/03
代表 平山 恵
メンバー 大岩 圭之助、賴 俊輔
目的・意義  2011年3月の東日本大震災以降、日本各地で自然災害が起こっている。一見、天災であるように見えるが、人間の環境破壊による地球温暖化等による人災ともいえる。これ以上、人間が地球資源やエネルギーを消費することは、益々地球を破滅させ、人間の住環境を悪化させる。また、原発事故を契機に、各地で電気節約など、我々ひとりひとりが節約すればこれほどエネルギーを浪費しなくても良いことがたくさんあることに気づかされた。
 昨年の国連の総会で、Sustainable Development Goals が採択されたことは、世界の人々がこの地球環境の問題に危惧の念を抱いていることを反映している。発展途上国においても、先進国による資源の搾取が行われ、特に中東では資源の取り合いが根本原因となり戦争が長引いている。戦争は最大の環境破壊であり、今回の国連決議では初めて平和と環境についての言及がなされた。環境先進国であるドイツをはじめとするヨーロッパ諸国では、四半世紀前からこの問題については懸念されており、市町村単位でローカリゼーションを進めてきた。日本では311という人間の生存を脅かす事件が起こったにも関わらず、311直後の節約ムードはまだどこかに消え去っているようである。そういった日本の「平和ボケ」様相は、海外の環境問題研究者からも指摘されている。
 今こそ、日本はそれぞれの地域の知恵とグループダイナミクスでローカリゼーションを図り、安全な環境社会を自分たちの手で作り、これ以上の環境破壊を避け、将来に環境負荷をかけない地域を作るべきである。ひいては、他の国の資源を搾取しない本当の意味で自立した「先進国」となる 必要がある。これこそが本当の世界平和への国際貢献であり日本の安全保障であると考える。
活動報告 『研究所年報』第23号 最終報告書

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2016年度

テーマ 企業の社会的責任と市民の社会的関与の研究
     大学と社会をつなぐ体験的な学びの視点から
期間 2016/04~2018/03
代表 齋藤百合子
メンバー 吉井淳、櫻井結花(桃山学院大学)
目的・意義 グローバル時代の製造業や水産業などでは原料調達から生産、そして流通過程におけるサプライチェーンが加速している。こうしたサプライチェーンにおいて人権侵害や環境汚染が発生しないよう、もしくは発生した後の改善など、人権遵守や労働環境の向上、そして環境への配慮などの説明責任と改善が企業に求められている。一方、高等教育機関では国際競争力増強のための「グローバル人材」の養成が求められているが、経済界が求めるスキルを備えた「グローバル人材」の養成だけでなく、労働環境や自然環境に配慮しながら持続的社会を形成していく市民としての意識の醸成=市民教育の養成は軽視されている。学習経験の中で現実に直面しても深く考察できない大学生も増えている。  上記を背景に本研究は3つの目的をもつ。ひとつは、一企業における社会的責任、サプライチェーンのサプライヤーや消費者を含めた企業や産業界の社会的責任について研究すること、2つ目は企業だけでなく、「安価なモノ」を求める消費者としての市民の社会的責任もしくは社会的な関与に関する研究である。3つ目は企業の社会的責任と市民の社会的関与についての関連を考え、課題を発見し、課題を解決する方法を考える教育素材を開発することである。  本研究の意義は2つある。まず、グローバル企業と呼ばれる企業やそのサプライヤー、生産者そして消費者という各ステークホルダーにおける人権・労働問題や環境問題として発生している実態を、現場から学び開発学、経営学、そして国際法という異分野横断型の研究が可能で、国際学、平和学、教育学的な貢献が可能であることである。次に本研究でとりあげる研究事例を課題として提示し、問題解決型(Problem Based Learning)の教育手法を研究することによって、体験型学習(フィールドスタディやインターンシップなど)で活用可能な教材開発が検討されることである。おもに国際的なキャリアを考える若者に有益な教育手法を提供する機会が期待できる。
活動報告 『研究所年報』第21号 最終報告書 齋藤百合子
 「ビジネスと人権―国際経営論の視点から」 櫻井結花
 「ビジネスと人権―国際的枠組」 吉井 淳

テーマ 都市の目、都市の耳
期間 2016/04~2019/03
代表 半澤朝彦
メンバー 平山恵、野口久美子、岩永真治(社会学部)
目的・意義 グローバル化とは「世界の都市化(ネグリ&ハート)」でもある。政治と文化の交錯を読み解くことは、ポストモダンにおける都市文化の創造に必須である。今回、社会学部の岩永教授との連携を行うことにより、これまでの座学的傾向を改め、いわゆる「町づくり」「地域おこし」の活動を通じて実際に地域社会の中に入り込み、音楽や音意識のみならず、デザインや絵画、建築など視覚的要素を研究に取り入れ、さらなる学際的拡がりを目指すとともに、学生や地域の人々を巻き込んだ幅広い知の構築を目指す。
従来も、政治学、国際関係学、音楽社会学や文化人類学等の越境的・学際的な連携を追求してきたが、表象文化論の中でも、聴覚的表象に関する研究の蓄積や理論化は相対的に遅れている。したがって、本研究の意義は、第一に、グローバル化研究や帝国論において(他の社会科学の領域同様に)等閑視されてきた音情報や音楽の政治社会的な意味を深く考察し、より研究が進んでいる視覚的表象に関する知見との統合を図ることである。
第二には、都市化(アーバニゼーション)の問題を焦点に据えることによって、グローバリゼーション研究のさらなる進展を図ることである。文献的な実証性のレベルを超え、従来の文書中心の国際関係学や政治学、歴史学のフロンティアを広げたい。
また、この研究は、「町おこし」「地域おこし」を実践的・理論的に考察することによって、単なる観客動員や啓蒙的イベントにとどまることのない、新しいタイプの地域政策提言につながるほか、明治学院大学の研究・教育・勤務環境の改善に貢献し、広く社会に新しいライフデザインを発信するきっかけとなる可能性がある。
活動報告 『研究所年報』第22号 最終報告書

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2015年度

テーマ 雑の研究―グローバル化する世界における多様性
期間 2015/04~2018/03
代表 大岩圭之助
メンバー 高橋源一郎、中村寛(多摩美術大学)
目的・意義    生物多様性や文化多様性などの文脈で多用される「多様性(diversity)」という現代社会のキーワード(でありながら、同時に、いまだに思考言語の中になじまない概念)について考えるために、この研究では日本古来の「雑」の概念と照らし合わせながら、社会的価値観としての「雑」と、自然における「雑」(例えば、雑木林、雑穀、雑草,雑菌)のインターフェースに光を当てたい。そして、逆に、この概念を梃子として、グローバリゼーション下で進む、社会的、そしてエコロジー的な均質化、“精神のモノカルチャー化”についてのより深い理解と批判を目指す。
   日本語の「雑」は、その意味自体が多様である。①種々のものが入りまじること。混ざっている状態で、均一、純粋でないこと。②主要でないこと。③分類しにくいこと。定義がはっきりしないこと。③有用でないもの。余計なもの。④粗くて、念入りでないこと・・・。これらの意味はどれも、効率や均質性の重視を特徴とする現代の合理主義社会において、負性と否定性を刻印されているものばかりだ。その意味で、「雑の研究」は、やはり大岩と高橋を主要メンバーとして行われた「弱さの研究」(2010~2013)を引き継ぎ、さらに発展させる試みだといえる。「雑」という“弱さ”が秘めている可能性を明らかにすることで、危機深まる現代社会を乗り越えるための道を開きたい。

活動報告 『研究所年報』第21号 最終報告書

テーマ 領有権問題の克服に向けて
期間 2015/04~2018/03
代表 孫占坤
メンバー 高原孝生、波多野英治(ヤングン大学)
目的・意義    「住民」、「政府」に並び、「領土」が近代主権国家を構成する3要素の一つであるだけに、領有権紛争は従来から国家間の武力衝突や戦争を引き起こすことがしばしばあった。1960年代の非植民地化運動以降、資源ナショナリズムや天然資源に対する永久主権の意識の高まりで、海の境界争いを含めた領有権紛争が以前にも増して国際社会の平和を脅かす大きなファクターとなってきた。近年の尖閣諸島や竹島問題に至っては、領有権紛争は資源問題に留まらず、関係各国の愛国心やナショナリズム意識の強化、更に軍備拡張、政治体制の転換のために利用され、東アジア地域の平和を危機に陥れていると言って過言ではない。
   このような状況認識の下、本共同研究は領土・海をめぐる領有権紛争とナショナリズムの関係や、紛争解決における国際法の役割、紛争の悪化・防止における信頼措置の醸成などについて研究し、領有権紛争の克服を基本的な研究目的とする。このような研究は、眼下危機に瀕している日本の平和(主義)の取戻しには勿論、アジア地域、ひいては国際社会における「法の支配」や平和と安全の維持を考える上でも重要な意義を有するものであると理解している。

活動報告 『研究所年報』第21号 最終報告書「領有権対立を乗り越えるために」

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2014年度

テーマ 中国におけるエネルギー開発と環境保全の課題
期間 2014/04~2017/03
代表 田暁利
メンバー 熊本一規、袁鋼明(中国社会科学院)
目的・意義
  1. エネルギー需給が中国経済の持続発展を左右する現状の認識  2010年時点で中国はアメリカを抜いて世界最大のエネルギー消費国となった。その原因は中国経済の急成長に起因することは言うに及ばない。2000年から10数年間、世界の石油貿易量の増加分の37.6%が中国の石油輸入量によって占めることとなった。 さらに中国の主要なエネルギーの石炭の輸入量も急増している。2011年には中国の石炭輸入量は1億8240万トンとなり、長年、世界最大の石炭輸入国であった日本の1億7522万トンを上回り、世界最大の石炭輸入国となった。石炭を主要エネルギー源とした結果、中国は二酸化炭素排出大国、環境汚染大国となった。
  2. エネルギー政策転換と問題点の究明 急速な経済発展による活力と待ったなしの深刻な大気汚染を背景に、中国政府はエネルギー政策の転換を余儀なくされた。中国政府は新エネルギー分野を産業戦略面からも重視し、第12次5ヵ年計画(2011~2015)では将来の支柱産業を目指す「戦略的新興産業」として位置付けている。新エネルギー分野の開発・普及は環境面から見れば、もはや不可欠である。  そこで、本研究の目的と意義は中国のエネルギー政策の転換に伴う問題点を指摘し、その改善策を提言することを試みることにある。
活動報告  

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2013年度

テーマ アジア・アフリカ地域における資源開発の政治経済学分析―構造調整期の再検討―
期間 2013/04~2016/03
代表 賴 俊輔、勝俣 誠
メンバー 孫占坤、芳賀 貴子(国際学研究科博士後期課程)
目的・意義 「南」における資源問題は、新興国(例えばBRICs)の需要急増もあり、大きな国際政治経済問題となっている。本研究は、構造調整期のアジアとアフリカを対象として、資源問題の性格と範囲を政治経済学の手法で明らかにすることを目的とする。
  その意義は2つ存在すると思われる。

  1. 構造調整期(1980-90年代)の政治経済学からの地域研究を踏まえたアジア・アフリカの事例研究は未だ 充分になされていない。
  2. 「資源争奪」を 領土ナショナリズムの限界と踏まえて、そもそもグローバル化する経済において資源の占有はどんな意味を持つのかを国際学の手法でも問い直してみる。
活動報告 『研究所年報』第20号最終報告書
 賴 俊輔「カンボジア・プノンペンにおける水道改革」
 
勝俣 誠「アフリカ地域における農業資源開発の政治経済学分析」

テーマ インターンシップの運用および学習成果に関する研究
期間 2013/04~2015/03
代表 吉井 淳
メンバー 斎藤 百合子、櫻井 結花(立教大学)
目的・意義 <研究目的>
本研究の目的は、以下3点である。
 
  1. 国内および外国の大学が、国外にインターンシップを派遣するプログラムにおける運用状況を把握し、より安全に、またプログラムの質を高めるための先行実践事例を検討する。
  2. 大学教育における学外および国外に学生を派遣する体験型学習および教育プログラムに関して、学習成果を検討する。とくにグローバル人材Global Human Resourcesが求められている昨今、国際インターンシッププログラムがグローバル人材育成にどのように貢献できるのかを探る。
  3. 1と2の考察および分析により、本国際学部のインターンシッププログラムの教育の質の向上と新たなプログラム開発の可能性の探求、および運用面での安全管理に寄与する。
    <研究の意義>
    本研究は、体験的学習としての理論研究だけでなく、理論に基づいたプログラム設計とプログラムを実践していく際の運用事例の比較という実践的な研究である。とくに、国際学部で実践されているインターンシッププログラムの質を向上させ、安全管理に配慮した運用に関して検討することで、持続可能でよりよいプログラム開発に寄与できる。
    また、本研究チームは、学内の国際交流や学生の国際的な派遣事業に携わる吉井淳教授と、本学の経済学部で国際経営に関する海外研修プログラムを開発・実践してきた櫻井結花国際学部付属研究所研究員および国際学部インターンシップ担当の齋藤百合子で構成しており、それぞれがこれまでの知見を活かすことが可能である。また萌芽的ではあるが本研究成果は本学部および学内のプログラムに寄与できる。
活動報告 『研究所年報』第18号 最終報告書

テーマ 越境する音と国際関係史
期間 2013/04~2016/03
代表 半澤 朝彦
メンバー 森 あおい、平山 恵、細田 晴子(日本大学)
目的・意義 本研究は、グローバル化によって変容する日本の音楽や音意識を扱ったこれまでの共同研究を発展させたものである。それなりの研究蓄積がある日本音楽史と異なり、グローバルな音楽や音の政治的相互関係の全体像は非常に曖昧なままである。当然、本研究でも全世界をカヴァーすることは不可能なため、ヨーロッパと日本のほか、アメリカ(ラテンアメリカを含む)とアラブ世界に着目し、音楽(作品)だけでなく、いわゆる環境音の越境の実相を探る。音に着目して、これら地域の歴史的な相互関係の考察と比較研究を行うのが目的である。
   本研究の意義は、第一に、グローバル化研究や帝国論においても(他の社会科学の領域同様に)等閑視されてきた音情報や音楽の政治社会的な意味を深く考察するという点にある。とりわけ「音楽ジャンル」を超えた総体的考察は、研究史上非常に大きな意義がある。いわゆる「音楽学」は、ほとんど「クラシック音楽」の研究に終始しており、「ポピュラー音楽研究」やカルチュラル・スタディーズとは統一的な像を結んでいない。一方で後者は、歴史的視点や実証性に欠ける傾向がある。本研究には、そうした問題点をできる限り克服・是正しようとする目的がある。
   第二には、音楽の実践や環境音の実際を考察の対象に積極的に含めることで、文献的な実証性のレベルを超え、音や音楽の越境的性格のより核心に迫ることができる点が挙げられる。文化を「情報」として捉えれば、越境するのは音だけではないが、音が与える影響の実相を踏まえることで、文字情報や視覚情報とは異なる、音や音楽に固有の特徴を明確化できる。
   さらに、実践的内容・考察を多く含む本研究は、明治学院大学の研究・教育・勤務環境の改善に貢献し、広く社会に新しいライフデザインを発信するきっかけとなる可能性がある。
活動報告 『研究所年報』第19号最終報告書

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2012年度

テーマ 核時代における軍縮努力:今日の人道的アプローチと非核地帯化の論理の歴史的展望
期間 2012/04~2015/03
代表 高原 孝生
メンバー 勝俣 誠、孫 占坤、浪岡 新太郎、秋月 望、李 俊揆(北韓大学院研究員、ポスト・ドクトラル・フェロー)、 Benoit Pelopidas(Postdoctoral Fellow, Center for International Security and Cooperation, Stanford  University;スタンフォード大学国際安全保障協力研究センター研究員、ポスト・ドクトラル・フェロー)
目的・意義 今日の核廃絶への動きを、どのような歴史的文脈に位置づけるべきか。現在、オバマ政権の米国がまがりなりにも「核兵器のない世界」に向かうことにコミットしており、昨年のNPT再検討会議の最終文書では、初めて核兵器禁止条約(NWC)への言及がなされた。核軍縮NGOは軒並み、核兵器の非人道性を前面に出してNWCを目標に掲げるようになり、他方、従来からの目標である非核兵器地帯の拡大も、とりわけ北東アジアについて言及されるようになった。こうした今日の核軍縮アプローチの妥当性を、冷戦期のそれを振り返ることでとらえ直す。核不拡散条約でも明文で言及されている「全面完全軍縮」に特に焦点をあて、核軍縮と通常兵器軍縮との連関を考えることを、一つの着眼点とする。
こうした歴史研究と理論研究の重ね合わせは、あまり前例がなく、核兵器の非正統化をテーマとした研究の先駆者である米国モントレー研究所との交流は、原爆投下国である米国と被爆国日本との核廃絶論の対話としての意味もあるものと考える。
活動報告 『研究所年報』第19号 最終報告書

テーマ 流域文化圏形成の研究
期間 2012/04~2015/03
代表 竹尾 茂樹、大木 昌
メンバー 森本 泉、齋藤 百合子、戸谷 浩、猪瀬 浩平(明治学院大学教養教育センター)、 和気 一成(早稲田大学)
目的・意義 私たちは,ある地域の文化を,漠然としたものではあるが,ある程度識別可能な境界をもった文化圏(例えば「関西文化圏」のように)として了解している。ある文化圏が形成される要因には気候や地理的条件などの自然環境と,その地域が経験した歴史的な経緯とがある。現実には,自然環境と歴史的経緯とが複雑に組み合わされて文化圏が形成されてきた。文化圏研究では,現在目にする文化圏がどのような特色をもっているかを明確にし,他の文化圏と比較することは一般的であるが,これまで,個々の文化圏がどのように形成されてきたのかについては,資料的制約もあって,あまり研究されてこなかった。
本研究の目的は,地域的な文化圏形成の一つのタイプとして流域文化圏の形成を想定し,これを歴史的に検証することである。ここで「流域文化圏」とは,広義の河川ルート(河川沿いの道,河川の舟運,陸路および海路と河川の舟運との接合)を媒介とした人・物・文化の交流が醸成する文化圏のことである。文化圏の形成史はしばしば前近代に遡り,前近代社会の交通において河川ルートは重要な役割を果たしていた。今日の日本ではメディアと交通機関の発達により情報・文化の均一化が進行し,他方で,地域文化は相対的に薄められつつある。しかし,後者が全て消失してしまったわけではない。各地域には,方言,食べ物,祭りなど「基層文化」ともいうべき風俗習慣がある。「基層文化」の形成過程を厳密に解明することは非常に困難ではあるが,河川ルートを媒介とした文化の伝播と形成という視点を採用することにより,この問題の一端が明らかになるのではないかと考える。舟運の歴史,道の歴史そのものについては多くの研究はあるが,それらを流域文化圏形成という問題意識と結びつけた研究は,私見の限りきわめて少ない。この意味でも本研究は意義があると考える。なお,本研究では日本を主たる対象とするが,比較のため海外の事例もいくつか検討する。
活動報告 『研究所年報』第18号 最終報告書

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2011年度

テーマ 「排除する社会規範」を超えたコミュティづくり
期間 2011/04~2014/03
代表 浪岡 新太郎
メンバー 平山 恵、勝俣 誠、GILL, Tom、 HAMMOUCHE Abdelhafid(リール大学)、 中島 康予(中央大学法学部)、 カジマ・マルケス(セアラ州立大学)
目的・意義 国際社会でも、一地域社会でも、大学という限定された社会でも、そこに生きる人々が「心地よい」と感じるコミュニティに暮らすことが理想である。しかし、実際は何か社会的力が働いて、ある規範が作り上げられ、その圧力に引っ張られて生きている観がある。その力に抗おうとしても、いつのまにか長いものにまかれて、あきらめの境地になっていることはないか。特に社会規範が作り出す「排除」は人間世界が社会のゆがみの中で人為的に作り出した厄介なものである。日本では「いじめ」という現象の中でさまざまなコミュニティに現れている。子どもたちのいじめで問題視されている学校社会だけでなく、大人が作る会社社会や豊富な経験を持っている退職者社会においてさえ「排除」の問題が顕在化してきている。
本研究では、それぞれのコミュニティの中で排除されて「心地悪い」生活を余儀な除されている人々の実態を明らかにし、その要因を分析する。ひいては「排除する社会規範」にどのように対処していけば「心地良い」社会をつくりあげていけるのか検証する。
この研究は家族、学校、隣組といった小さなコミュニティにおける社会規範が地域社会、国家、国際社会という大きなコミュニティの社会規範に影響することを仮説としている。さまざまな事例を取り上げることによって、どのようなサイズのコミュニティにも共通する人間社会の「排除する社会規範」を考察したい。この研究が現実社会のネガティブな規範の改善に貢献できれば幸いである。
活動報告 『研究所年報』第17号 最終報告書

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2010年度

テーマ 「弱さの研究」
期間 2010/04~2013/03
代表 大岩 圭之介
メンバー 高橋 源一郎、向谷地 生良(北海道医療大学教授)
目的・意義 「弱さ」の必要性について
社会的弱者と呼ばれる存在がある。たとえば、「精神障害者」、「身体障害者」、介護を要する老人、難病にかかっている人、等々である。あるいは、財産や身寄りのない老人、寡婦、母子家庭の親子も、多くは、その範疇に入るかもしれない。自立して生きることができない、という点なら、子どもはすべてそうであるし、「老い」てゆく人びともすべて「弱者」にカウントされうるだろう。さまざまな「差別」に悩む人びと、国籍の問題で悩まなければならない人びと、移民や海外からの出稼ぎ、といった、社会の構造によって作りだされた「弱者」も存在する。それら、あらゆる「弱者」に共通するのは、社会が、その「弱者」という存在を、厄介なものであると考えていることだ。そして、社会は、彼ら「弱者」を、早急にそこから脱するべき状態、保護されるべき哀れな存在であると見なすのである。いや、社会の本音は、「弱者」を目障りであって、できるならば、消えてしまいたいか、そうでなければ、隠蔽するべきだと考えるのである。
だが、ほんとうに、そうだろうか。「弱者」は、社会にとって、不必要な、害毒なのだろうか。彼らの「弱さ」は、実は、この社会にとって、なくてはならないものなのではないだろうか(かつて、老人たちは、豊かな「智慧」の持ち主として、所属する共同体から敬愛されていた。それは、決して遠い過去の話ではない。
効率的な社会、均質な社会、「弱さ」を排除し、「強さ」と「競争」を至上原理とする社会は、本質的な脆さを抱えている。精密な機械には、実際には必要のない「可動部分」、いわゆる「遊び」がある。「遊び」の部分があるからこそ、機械は、突発的な、予想もしえない変化に対処しうるのだ。社会的「弱者」、彼らの持つ「弱さ」の中に、効率至上主義ではない新しい社会の「原理」の可能性を探ってみたい。
活動報告 『研究所年報』第16号 最終報告書

テーマ グローバリゼーションと日本における音楽演奏の変容
期間 2010/04~2013/03
代表 半澤 朝彦
メンバー 大木 昌、岩村 英之、有澤 知乃(東京外国語大学)
目的・意義 「グローバル化と音楽」という研究視角は、現在、西洋音楽中心の伝統的な音楽学のみならず、おそらくそれ以上に、いわゆる「民族音楽学」、社会学、文化人類学の分野において、大いに注目を集めているテーマである。コーディネータの専門である、歴史学、国際関係学においても、日本の西洋音楽受容史についての最近の研究の進捗状況、「ソフト・パワー」への注目を考えると、「グローバル化と音楽」という観点から新しい学際研究を行うに十分な研究史的素地が存在する。
本研究は、「グローバル化と音楽」という大枠を意識しつつ、次の二つの目的(焦点)を持つ。(1)日本における音楽演奏とグローバル化の関係を多面的に考察する。(2)歴史的、社会的な背景を考察する中で、「演奏」「享受」の具体的な行為に立ち入り、従来は技術的、演奏家だけの専門的知見と考えられている領域で文化の交流、混交、グローバル化による意識変容の影響などを探る。
これにより、本研究は次のような学際的かつ社会的な意義を持つことが期待される。(1)グローバリゼ―ション研究において、従来研究が手薄であった側面を明らかにし、グローバル化研究全体の発展に寄与する。とりわけ、世界史的文脈の中で現代日本の音楽環境の特質を明らかにする。(2)日本の音楽演奏の実践、音楽の楽しみ方に関して、新たな知見に基づいた提言を行うとともに、演奏と鑑賞行動の向上に貢献する。(3)日本や、日本の中の各地域のアイデンティティを生かした新しい「グローカリゼーション」のあり方を提言する。(4)音楽の分野からのアプローチが比較的手薄であった明治学院大学の研究・教育環境を改善し、就学、教育、勤務環境を文化的に豊かにすることに貢献し、また広く社会にも新しいライフデザインを発信する。
活動報告  

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2009年度

テーマ 南北問題の学際的研究
期間 2009/04~2012/03
代表 勝俣 誠
メンバー 大木 昌、涌井 秀行、高原 孝生、竹内 啓、井上 泰夫(名古屋市立大学)、中野 佳祐(英国国際政治学会、会員)
目的・意義 国際学部は国際学によって成り立っている。この領域はいまだ輪郭があいまいであるが、各所員の専門分野とすり合わせ、時代の思想、実践に切り込むことが、IISMの使命と考えている。
本研究は20年以上にわたるコーディネーター(勝俣)の南北問題構成のつきつける現代世界の諸課題と現代の社会・人文科学理論から再検することを狙いとしている。
第一の意義は、現代金融危機に代表されるグローバル化現象下における国際政治経済秩序の聞きを各専門分野から解読し、その課題と国際学の中に位置づけるという学問的営為により本学部の研究レベルの維持・拡充である。
第二は、南北問題を始めとする地球的課題に関する学部、大学院授業の内容向上の意義である。
活動報告 『研究所年報』第15号 最終報告書

テーマ 海と山が醸成するアジアの文化
――島嶼地帯および内陸山岳地帯の少数民族に見られる文化復興とアイデンティティ形成の研究
期間 2009/04~2012/03
代表 竹尾 茂樹
メンバー 大木 昌、大岩 圭之助、孫 占坤、森本 泉、石垣 金星(郷土史家・伝統芸能継承者)
目的・意義 沖縄県八重山地方ならびに台湾東部の原住民のコミュニティは、ともに黒潮に抱かれた島嶼地域で首都圏や台湾西部の開発地域から遠隔であり、また伝統的な共同体に根ざしたユニークな文化伝統を維持してきた。しかし昨今の東アジアの劇的な社会の変化のもとで閉じた社会を保つことはできず、世代交替にともない社会変動を経験しつつある。同様にベトナム北部の山岳少数民族や、ネパール共和国、中国チベット自治区といった内陸地域においても、急激な社会の組み替えが進行している。高度資本主義と国民国家の枠組みの中でこうした小規模で外部からの経済的・政治的な力に対して脆弱な社会が、その固有性を維持することはどのように可能か。先住民の自決権とアイデンティティが世界的な潮流になろうとしている中で、長らく培われてきた伝統的な祭祀や芸能、生業の技術などの精神・物質文化を現代の生活と状況にどうして合わせようとして、それぞれが独特の文化の醸成を行っている試みを検証する。
活動報告 『研究所年報』第15号 最終報告書
 大木 昌「近代化と『山の文化』の変容-マタギ文化の歴史的検討を通して」

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2008年度

テーマ 中国における局地経済圏の形成と経済開発区の役割
――天津浜海新区(経済区)の開発と華北・西北地域の産業構造再編――
期間 2008/04~2011/03
代表 司馬 純詩
メンバー 田 暁利、白 雪潔(南開大学経済社会発展研究院産業経済研究所 所長)
目的・意義 研究の主目的は以下の二つである:
1.新区は後発型開発特区として、規模と多様性において優位性を持つ浜海新区の開発過程における(A)投資と開発対象の優先順位、(B)蓄積資本の増大に伴う資本・技術の呼び込み効果、の研究。
2.新区の形成に伴う中国西北部と華北地域の経済発展の調査研究。
3.新区は中国東北部と西北部、首都と華北の拠点窓口として貿易と外国投資に伴う物的・人的・資本的資源の流通回路の結束点であり、新区を経由する資源・製品の流通量と方向性の調査による奥地経済の開発・発展法則の研究。
上記目的に対応した天津浜海開発区は以下の特徴を持つ;
1.新区は東側黄海(湾)を隔てて国内は東北の入り口大連、東南の山東半島、外国は韓国・日本に海路を 開いている。
2.国内の東北三省、西北部、北京周縁、上海周縁への鉄道および陸路が整頓されている。
3.新区の規模は港湾を含む海岸線153キロメートル、総面積2270平方キロメートル(東京都の面積2187平方キロメートルを上回る)。
4.新区は3つの行政区(塘沽区、漢沽区、大港区城区地域)、3つの功能区(天津港、開発区、保税区)、既存の地場産業・商業区(海河下流冶金工業区、東麗区無暇街、津南区葛沽鎮)成り立つ。
5.人口140万(05年現在)。
研究の意義は中国型ハード及びソフト・インフラにおける普遍的経済開発の法則研究である。
活動報告  

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2007年度

テーマ 世界秩序の変容と国家
――「万国公法」の受容と中華システム――
期間 2007/04~2010/03
代表 秋月 望
メンバー 孫 占坤、石田 徹(早稲田大学政経学部助手)
目的・意義 中華システムとその外縁で「近代」をむかえたそれぞれの国においては、従前の世界観・世界秩序の変容を迫られた。問題になったのは、新たに持ち込まれた国際法(万国公法)秩序の「受容/拒絶」の問題だけではなく、従前の秩序(華夷秩序)をどのように評価し、どのように対処―継続なのか放棄なのか―するのかという問題でもあった。近代へのプロセスにおける世界秩序(世界観)の変容については、中国や朝鮮、そして日本における「万国公法の受容」というテーマですでに先行研究がある。このプロジェクトでは、先行研究を継承すると同時に、対象の領域をさら広げて、チベットや中国の西域(新彊ウィグル)についても考察を試みたい。チベットを中国「固有」の領土と主張し、チベットの分離独立運動を中国の「主権」、「領土保全」を破壊するものと非難する中国政府と、中国によるチベット支配を「外国による侵略」と非難して「民族自決」を主張する亡命チベット政府、両者は真っ向から対立していながらも双方の主張の核心、「主権」、「領土保全」と「民族自決」はいずれも国際法的発想である。そこには、中華世界の東縁部分で起きた在来の華夷的世界観の延長と断絶が強く影を落としていると考えられる。可能であれば、同様の文脈から、日本が傀儡国家として作り上げた「満州帝国」の国家論理も取り上げて検討したい。
これは、単に「過去における出来事」の研究ではなく、今日において自己や他者の「近代」を如何に評価し、現代社会における国際関係に投影しようとしているかに関わるテーマである。「華夷システムへの固執=後進性」という論理を掲げて「近代化」を無条件礼賛し、近代日本の侵略・戦争を正当化しようとする動きが頭を擡げてきている今日、我々がどのような近代化プロセスを経て今日に至っているのかという再検討が不可避となっている。
活動報告 『研究所年報』第13号 最終報告書

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2006年度

テーマ GNH――豊かさという概念を問い直す
期間 2006/04~2009/03
代表 大岩 圭之介
メンバー 大木 昌、平山 恵、小田 義起(大学院国際学研究科修士課程1年)
目的・意義 本研究の目的は、現在世界を席巻している経済成長至上主義のイデオロギーを支えている「豊かさ」や「幸福」観を相対化し、そのほとんど宗教的とも言える呪縛を解くことにある。シューマッハがビルマ仏教社会との出会いを通して仏教経済学を構想したように、また、カール・ポランニーが非市場社会の研究を通して経済人類学をつくりだしたように、豊かさ概念の相対化のため、主にアジアのふたつの仏教国であるミャンマーとブータンをレファランスとしてとりあげたい。この研究は、経済のグローバル化や、新自由主義的イデオロギーへの批判の一翼を担うことをめざし、そのために、すでに始まっている幸福主義(エウデモニズム)的、快楽主義(エピキュリアニズム)的アプローチをとる。(クライヴ・ハミルトン『経済成長神話からの脱却』、辻信一『スロー快楽主義宣言!』を参照)
活動報告 『研究所年報』第12号 最終報告書

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2005年度

テーマ アフリカにおける自然資源の持続的利用と地域開発
――生業アプローチを中心として――
期間 2005/04~2008/03
代表 勝俣 誠
メンバー 古市 剛史、Mamacon NDiAYE(ENDA-GRAF SAHEL)
目的・意義 アフリカにおける自然資源は急激な人口増、生活向上への願望、グローバル化の市場拡大傾向などにより破壊ないし悪化の一途をたどっている。その状況下では単に貴重な動植物が失われるだけでなく、自然資源の枯渇や砂漠化などの危機を通じて地域住民自身の生活・生業が脅かされている。かかる状況を克服するためには効率的な自然資源の持続的利用のプログラムを策定・運用することと通じ、新しい地域発展のあり方を検討・提案していくことが不可欠である。この手法は、国際学を貫く複数学問分野アプローチを十分に駆使して、環境教育および参加型開発的発展に関する知見を深めるに際し、ユニークかつ実効性のあるものを考えられる。
活動報告 『研究所年報』第11号 最終報告書

テーマ 中国社会変動における村落と家族
――大躍進から文革期の人口激動
期間 2005/04~2008/03
代表 涌井 秀行
メンバー 竹内 啓、孫 占坤
目的・意義 毛沢東の「大躍進」は,理想郷を建設するための前代未聞の実験であった。期待したはずの「私心のない兄弟のような」ソ連の援助は,帝国主義者の侵略顔負けの厳しい代償要求を伴うものであった。中国農民自らが,すなわち毛沢東自身が他人(国)の手を借りることなく理想郷・「共産主義社会」をつくり上げるようと決心した。毛沢東は,人民公社によって,地上初の共産主義の楽園を実現できると確信したのである。だが現実には,もっとも豊かな穀倉地帯でも,何百万人もの農民が餓死し,生き延びた人々も骸骨のようにやせ細っていたのである。推計3000万人の餓死者。いかに6億の人口を擁する当時の中国のとっても,その被害は惨憺たるものであったろう。いや中国ばかりではなく,人類にとっても「負の遺産」といえるだろう。
これに対する社会科学の方法論にもとづいた本格的な研究は,現在までほとんどないと思われる。その最大の理由は,中国政府が正確な人口統計データを公表しなかったことにあるが,近年これに関連するデータ (中華人民共和国人口統計資料彙編:1949-1985) が公表され,入手が可能となった。これによって,中国の省・市・郷・鎮の長期的なスパンの人口動態の把握も可能となり,人口変動の解析が可能となってきている。こうした,社会科学的アプローチによって,中国の人口変動とその社会に与えた影響の解明は,意味があるものと考えられる。「スターリンの粛清」と「毛沢東の『大躍進』」。いずれも20世紀社会主義が犯した「誤り」ではあるが,本研究によってこのいまだ未解明の「毛沢東の『大躍進』」とその帰結を解明することは,人類史にとって,大きな意義を持つものと思われる。
活動報告 『研究所年報』第11号 最終報告書

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2004年度

テーマ 家畜と人間社会
期間 2004/04~2007/03
代表 竹中 千春
メンバー 戸谷 浩、森本 泉、竹尾 茂樹、橋本 肇
目的・意義 地域研究と学際研究を基軸にした国際学の新たな展開として、それぞれ政治学・歴史学・地理学という3つの異なる学問領域を専攻する三人の研究者が、かなり異なる特徴を持ちながらも関連性もある3つの地域ないしは国・社会を事例として取り上げ、共通テーマ「家畜と人間社会」を切り口に、従来とは異なる切り口の分析を試みようとするものである。
研究上の意義を以下にあげたい。
1)新しく学部に加わったメンバーとともに、国際学のあり方を考えながら共同研究を行い、国際学自体の内容を検討していくこと。
2)「地域研究」として、すでに区切られている「東欧」とか「南アジア」という「地域」に拘束されずに、広大なイスラム圏と隣接する地域としての歴史を持ったハンガリーやインドという「地域」の位置づけや、家畜を重要な社会的資源とする農村性をもった「地域」としての3つの社会という位置づけによる比較を試みる。それによって、「地域研究」自体の再定義にも挑戦することになると思う。
3)先住民問題や環境問題など、今日の新しい課題は、あまりにも西欧近代的な人間中心主義の偏りに発しているとも言える。政治学・歴史学・地理学も、やはりそうした学問体系の一つである。改めてこの人間中心主義を批判する視座として、動物という思いがけない観点を挿入して、学問のあり方自体を問い直す契機を探してみたい。
活動報告 『研究所年報』第10号 最終報告書

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2003年度

テーマ 前近代と近代社会におけるジェンダー、身体、セクシュアリティの考察
期間 2003/04~2006/03
代表 合場 敬子
メンバー ワトソン・マイケル、Elizabeth Oyler(ワシントン大学アジア・近東言語学部)、Rajyashree Pandey(ラ・トローブ大学アジア研究学部)
目的・意義 前近代日本の文化と歴史におけるジェンダーとセクシュアリティのテーマは、広範な領域の専門家によって、最近非常に探求されてきた。ジェンダー役割を定義における言語、衣装、行動の役割は、歴史と文学の研究者の微妙な分析から恩恵を受けており、生物学的セックスとジェンダーの間の区別は、「とりかへばや物語」のような作品において研究されている。平安時代の日本では、女性作家が傑出していたので、この時代は、ジェンダーに関する最近の研究の大多数(例えば、 Field 1987, Sarra 1999)が焦点を当てている。江戸時代の日本も、平安時代の次に研究者の関心を引いている。特に「男性と男性の間のセクシュアリティ」(Pflugfelder 1999)のテーマに関してである。本研究では、先行研究で十分関心が払われてこなかった時代やテーマを検討する。時代は、鎌倉、室町時代であり、テーマは、「男らしさ」の表現(および自己表現)である。
近代社会においては、1960年代のフェミニズム運動を通じて、フェミニストたちはジェンダー概念を生み出し、その概念を使って、生物学的に決定されたのではなく、社会的に構築された男女の差異を説明してきた。一方、多くのフェミニストたちは、セックスを、「自然な」男女間の生物学的な差異として定義し続け、その基礎の上に、社会的・文化的性としてのジェンダーを定義したため、セックス自体が「自然」であるという認識を逆に強めることになってしまった。90年代に入り、このジェンダーとセックスを区別することに対する疑問が、主に身体を考察する研究を通じて提示されてきた。すなわち、身体、とりわけ男女間の身体的相違は、セックスの領域にあるとされ、不変のカテゴリーと見なされていたからである。幾つかの先行研究は、異性愛、セックス・カテゴリー、性化された身体の間の強い関係を示唆している。近代社会の研究では、この関係を実証的に考察することによって、ジェンダー概念の精緻化に寄与することが目的である。
この研究では、前近代社会と近代社会のジェンダー、身体、セクシュアリティの相互関係をそれぞれ考察し、相互に比較することを目的としている。身体とジェンダーに関する社会学的研究は、英語圏で近年急増しているが、日本ではわずかである。さらに実証的方法で探求している研究は殆ど存在しない。この点で、本研究は先駆的な意義を日本の社会学、文学研究において持つと言うことができる。
活動報告  

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2002年度

テーマ ボランティア論の構築に向けての国際学的研究
期間 2002/04~2005/03
代表 森本 栄二
メンバー 孫 占坤、条川 光樹(本学名誉教授)
目的・意義 ボランティアが関わる活動領域は無限と言っていい程、広範囲にわたっている。それだけに、その体験談は実に多様だ。しかし、その割には、この多様さを包括するような「ボランティアとは何か」「ボランティア活動とは何か」といういわば原点的な問いかけは意外と少ない。
「精神なきボランティア」「理想なきボランティア活動」と言われないうちに、この原点をよりよく見据えられるようにするため、(1)ボランティア活動及びボランティアが関わる活動の意味や役割について、多角的、国際的な視野から研究すること。(2)ボランティア活動を支える精神、理念を考慮することは、体験談中心のボランティア論から、論理性のある研究課題(対象)としての「ボランティア論」を構築できる可能性が見えてくる。
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テーマ 東アジアにおける歴史認識とアイデンティティ構築
期間 2002/04~2005/03
代表 竹尾 茂樹
メンバー 高原 孝生、竹中 千春、松島 浄(明治学院大学社会学部)、屋嘉比 収(琉球大学)
目的・意義 戦後社会をナショナルな区分によってつくられた均質空間であるという見方の有効性と限界については昨今さまざまな形で検証が行われている。それは一方で国際政治のアクターとして国民国家のみを想定しないで、地域とか市民社会などの役割を視野に入れるものである。他方では経済や文化の領域においても進行するグローバリゼーションの圧倒的な影響下で、各々の社会がことなる結びつき方をしはじめているという認識によっている。その際に第2次世界大戦以前に世界の編成のあり方としてあった「帝国」や「植民地」といった枠組みがじつは過去の遺制ではなくて、あらたな編成のもとに今日の社会関係を構成しているという議論がなされるようになった。また各々の社会においてはナショナリティーやジェンダー、レイス、クラスといった複数のカテゴリーが互いに錯綜しながら関連しあっているのが今日的な状況である。わらわれはこうした複合的な社会状況を当面「ポストコロニアル状況」とよぶ。そしてこうした社会状況の分析にあたって<歴史的な記憶>の問題と<アイデンティティ>構築の関連に着目した。その理由は、社会の構成メンバーがもつ「集合的記憶」の形成が、上に述べたような社会関係の編成、さらには個々人のアイデンティティ形成に重要な意味をもっていると考えるからである。そのことは近年の歴史教科書の記述をめぐる日本内外の議論や運動に端的に表れている。歴史的な記憶の生成と構築の過程はさまざまであるが、東アジアの社会のなかで進行しているいくつかのケースを、国際政治・平和学・比較文化論・社会学等の知見と方法をもって分析することをこのプロジェクトの目的とする。こうした共同作業を通じて、今日の社会編成についての動態的アプローチが可能になるであろう。
活動報告 『研究所年報』第8号 最終報告書

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2001年度

テーマ “スモール・イズ・ビューティフル”の再評価
――「持続可能な地域づくり」の現在――
期間 2001/04~2003/03
代表 大岩 圭之介
メンバー 涌井 秀行、竹内 啓、竹尾 茂樹、新原 道信(横浜市立大学商学部)
目的・意義 持続可能(Sustainable)な発展、開発、地域づくりということが、なが年言われてきたし、また様様な場所で実践されてもきた。「経済と環境」の両立という、この理論と実践は、しかし近年のグローバリゼーションとグローバリズムの流れの中で、どのように継続され、あるいは変容してきたのか。本研究では60年代から70年代に現れた「スモール・イズ・ビューティフル」という画期的な環境・経済・政治・技術・文化論に一度立ち帰り、それに照らし合わせるようにして、現状を考察しようと思う。そしてグローバリズムとそれに伴う環境破壊、モノカルチュラリゼーションを批判しそれに対抗する環境=文化論をつくる手がかりとしたい。
活動報告 『研究所年報』第7号 最終報告書「シューマッハーの遺産を現代に受け継ぐために」

テーマ 公共事業と漁業権に関する研究
期間 2001/04~2003/03
代表 熊本 一規
メンバー
目的・意義 共同漁業権は特殊な権利である。それは漁協に免許されるもの漁協自身は共同漁業を営まず、組合員のうち関係地区に住む者のみが共同漁業を営める。そのことに示されるように、共同漁業権は江戸時代の海の入会に由来する入会権的権利である。したがってそれは財産権である。
ところが、多くの公共事業では、共同漁業権が入会権的権利であることが明らかにされず、権利者からの同意取得や権利者への補償が曖昧なまま、事業が進められるのが常である。
本研究では、現実の公共事業における、共同漁業権に関する同意取得や補償の実態を調べるとともに(1)共同漁業権とはいかなる権利か(2)共同漁業権を侵害する際にはいかなる手続きが必要かを明らかにすることを目的とする。
活動報告  

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2000年度

テーマ Small Island States Project
期間 2000/04~2002/03
代表 SEWARD Robert
メンバー SEWARD Robert、SHINOHARA Hatsue、HIRASHIMA Shigemochi、TAKENAKA Chiharu、YOSHII Jun
活動報告 『研究所年報』第6号 最終報告書

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