ソーシャルワーク研究所

−事例検討学習会:「フクロウの止まり木」情報−


 2025年春、学びの空間「フクロウの止まり木」事例検討学習会(第3弾)をオンライン(Zoom)で開催いたします。参加者の募集期間は2024年12月9日〜26日です。
 「膝を突き合わせた関係」を重視するゼミナール方式による全7回にわたる継続参加型プログラムを通じて、ご自身を活性化する「経験」をしてみませんか。第3弾は、募集定員を縮小し、参加者から提出いただいた「事例」一つひとつを丁寧に読み込み、各回ごとにキャストを含めた全員で意見交換を行う方式で開催します。
 ご応募をお待ちしています。

【 開催概要 】

・第3弾のテーマ
ソーシャルワーカーとして成長を続けるために
  −「利用者理解」の方法と意義−
・講  師
渡部律子:ソーシャルワーク研究所相談役、日本女子大学名誉教授
川向雅弘:ソーシャルワーク研究所相談役、聖隷クリストファー大学教授
稗田里香:ソーシャルワーク研究所相談役、東京通信大学教授
北川清一:ソーシャルワーク研究所所長、明治学院大学名誉教授
・募集定員
5名(参加者は「書類選考」とし、提出頂く「参加申込書」をもとに選考します)
・参 加 費
42,000円(7回分〈@6,000×7〉を全納とします)
・開 催 日
2025年2月16日/3月9日/3月23日/4月13日/4月27日/5月11日/5月25日(全日程をオンライン〈Zoom〉で開催します)
・募集期間
2024年12月9日(月)〜2024年12月26日(木)
・申込方法
「参加申込書(Word形式)」をダウンロードし、必要事項の記載後、E-mail(件名:「フクロウの止まり木」申込)で提出して下さい。
※募集要項はPDF形式、参加申込書と事例提出用紙はWord形式で掲載しておりますので、参加を希望される方は下記よりご覧下さい。

募集要項(PDF形式)
参加申込書(Word形式)
事例提出用紙(Word形式)



「フクロウの止まり木」に参加を希望される皆様に
ソーシャルワーク研究所から贈るメッセージ
■渡部律子
 社会福祉職として成長する上で有効な方法の一つが、常に思考しながら実践し、その実践でぶつかった課題を修正しながら力を高めていく「省察的実践」です。省察的実践家としての成長には、スーパービジョンや事例検討会が役に立ちます。「ふくろうの止まり木」に参加し、成長を目指して学ぼうとする仲間や、講師陣とのやりとりを通して、自分自身の実践を振り返る機会を増やしませんか。この機会を使って、自分自身の中に蓄積された「実践知」「経験知」を状況に応じて柔軟に応用できるようになっていただければと願っています。

専門:ソーシャルワーク実践理論、心理学〈臨床・社会〉、ケアマネジメント実践論、高齢者福祉論、喪失とストレスコーピング、スーパービジョン。社会福祉学修士、心理学修士、学術博士。

■川向雅弘
 ソーシャルワーカーの仕事がますます「業務化」している中で、「支援する」とはどのような営為なのかを再確認できる場になればと考えています。おそらく、「支援する」とは、ソーシャルワークの「価値」を利用者と共に体現することでしょう。しかし、わが国のソーシャルワークは、そのミッションを土壌に成立しているというよりは、制度を実施する機能的側面で期待される対人支援の方法に「矮小化」されてきたという側面が否めません。制度に要請される対人支援とソーシャルワークの本質的価値を体現する取り組みとの間に生じるジレンマにいかに向き合うかも重要な課題です。

専門:高齢者支援領域や障害者支援領域を中心としたメゾレベルのソーシャルワーク論、ソーシャルワーク組織論。修士(社会福祉学)。

■稗田里香
 ますますマネージメントに傾いている今日の現場でクライエントが生きる希望を持てる実践を志向するには、クリティカルなアセスメントと、それを共有し、語り合えるスーパービジョンの機能を搭載したプラットフォームが重要と思います。「フクロウの止まり木」でソーシャルワークの風に吹かれながら羽を休め、明日からの実践に向かって一緒にエネルギーをチャージしましょう。

専門:ソーシャルワーク実践理論、アディクション・アプローチ。社会福祉学博士。

■北川清一
 私達の中に気がつかないまま埋め込まれている「ハビトゥス(habitus=無意識的な行動・知覚・判断の様式)」は、自己分析し、その結果を冷静に見つめることにより修正できると考えます。「フクロウの止まり木」での出会いと学びは、主観的「ものの考え方や行動の型」をソーシャルワーク理論(クリティカルな思考=critical perspective)」によって揺り動かし、あらたな「ソーシャルワーク感覚」が覚醒する機会になることでしょう。

専門:ソーシャルワーク(ソーシャル・グループワーク)論、施設養護論、家庭福祉論。社会学修士。


ソーシャルワーカーの学びの空間「フクロウの止まり木」の開設について

ご挨拶

ソーシャルワーク研究所
所長 北 川 清 一

 ソーシャルワーク研究所は、開設時から掲げてきた「志」を新たな「形」でお届けすることを企図し、2022年、社会福祉の実践現場で働く方々の職種や経験年数、就労に至るまでの経緯等の違いを超えて、「膝と膝を交え」「顔と顔を向き合わせた(face-to-face)関係」を重視した学び(事例検討学習会)の機会を準備しました。少人数のゼミナール方式による7回にわたる継続参加プログラムを提供し、これをソーシャルワーカーの学びの空間「フクロウの止まり木」と呼ぶことにしました。
 当研究所の精神的支柱として共に歩みを続けて頂いている相談役の渡部律子先生とは、2021年3月の研究所オフィス移転を機に、新たに、チャレンジングな事例検討学習会の立ち上げを検討してきました。対人支援専門職として、老若男女を問わず、障がいがあるか否かを問わず、市民としての暮らしを支え、主体的生き方の再生(treatment)に向けたかかわりを続けながらも、そのような支援の難しさを覚え、疲弊状態にある現場実践者の皆様に、そこから抜け出す方法をご一緒に模索する時間と空間を共有してみたいと考えるに至った次第です。「フクロウの止まり木」は、皆様が「ふっ」と息をつき、日々の緊張感から解き放たれ、この職業の「夢と希望と可能性」を再確認する「機会」と「仲間」に出会うことで、ご自身を活性化できる「経験」の提供を目指します。
 なお、第3弾となる事例検討学習会は、第1弾および第2弾と同様にオンライン(Zoomミーティング)で実施します。多くの社会福祉職の皆様の賛同を頂戴し、「フクロウの止まり木」でお目にかかれることを心より願っております。



ソーシャルワーカーの学びの空間「フクロウの止まり木」の目指すもの
−専門職アイデンティティの共有のために−

 ローマ神話やギリシャ神話の中で「学問の女神(ミネルヴァ)」として登場する「フクロウ」は、夜行性できわめて慎重な生態を示す動物です。しかも、時代を超えて、多様な生命体が複雑に交差する森の中で安心・安全を覚える「止まり木」を見つけだし、生息過程で得られた「知恵」を伝承しつつ生き抜いてきました。古代の人びとは、そのような生き様を注視し「ミネルヴァ」と名付けたと言われています。この度の呼びかけは、「フクロウ」の秀でた生態に共感できる仲間と出会い、ソーシャルワーカーとしての専門職アイデンティティの何たるかを体感できる「場」となるよう構想してみました。その理由は以下の通りです。
 厚生労働省(担当専門官)が、社会福祉士養成カリキュラム(2021年度から実施)改定作業の必要性に言及した際に挙げた課題の一つに、社会福祉士の専門性の「希薄化」「脆弱性」があります。これまでの行政説明と趣を変え、社会福祉士とソーシャルワーカーを使い分けず、掲げた課題の深刻さと、スーパービジョン体制の強化が強調されました。
 「曖昧さ」に関する課題は、国家試験が制度化される以前から問題視され、決して真新しい問題でありません。専門職として「業務独占」は認められず、「名称独占」として制度化された社会福祉士制度は、発足して30年以上を経過しました。この間、ある担当専門官が力説して語った「国家の試験」に合格し、必要な登録を終えている人材は271,263名(2023年2月末)と公表されています。専門職としての「共通基盤」が十分に醸成されていないことを意味する「希薄化」「脆弱性」の課題は、何故、解消されないままなのでしょうか。
 そこには、多くの社会福祉系大学が法律用語として規定された「相談援助」を担う人材養成に重きを置くことで、大学としての主体性と自律性を見失い、さらに「金太郎飴のような授業」とも揶揄されたソーシャルワークの教育と研究のレベル低下に帰すべき課題があると考えます。その一つは、当事者との間の「非対称性の問題」であり、二つは、政策的縛りの中で当事者本位の視点を見失いがちな「現場実践の構造的な問題」であり、三つは、収益の上がらない制度の狭間に埋もれがちな人びとに手を差しのべることに躊躇いを覚える「実践感覚の問題」であり等、枚挙に暇がありません。
 さらに考えなければならない課題として、ソーシャルワーク専門職の燃え尽き傾向や業務過程で生じる多様なタイプの「揺らぎ」のため、有為な人材の離職が顕在していることです。このような中で、スーパービジョン体制の強化の必要を説くことにいかなる有効性を見いだせるのでしょうか。取り上げるべき課題の順番が違うように思え、虚しさを覚えずにいられません。
 「フクロウの止まり木」は、実践現場で顕在している諸課題と向き合うにあたり、今一度、スーパービション機能、とりわけ、スーパーバイザーとスーパーバイジーの役割関係の見直しから始めることを提案します。これまでと異なる切り口(viewpoint)から、支援領域の違いを超えて「現場実践で体感する多様な事象の深層を理解できる能力」を育み、実践に取り込むことを目指す「学びの空間」に是非ともご参加下さい。



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