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2024年度 公開セミナー


テーマ  地域にとっての大学、大学にとっての地域とは?

「国際学部の設立構想」(1984年)という文書には、地域研究を国際学部の教育の特色の一つとしたいと記され、「世界のいかなる場所で働くことになろうとも自分のおかれた地域の問題を正確に深く研究し理解することができるような姿勢と方法、地域研究の応用能力を身につけさせること」を目指すと述べられています。 地域という語は多義的ですが、今年度のセミナーでは、主に大学周辺地域という範囲に絞ってお話しいただくことにしました。国際学部では、毎年公開セミナーを開催したり、教職員の個別のつながりで、地域のみなさんと交流してきたつもりでしたが、十分だったかといえば心もとない気がします。 今年度は、国際学部で大学周辺地域との関わりを大切にしてこられたみなさん(そして国際学部に隣接する舞岡公園で数年来協働してくださっている方)をお招きして、「地域にとっての大学、大学にとっての地域」について深めていきたいと思います。本セミナーが地域のみなさんと新たな形でつながるきっかけになればと願っています。

                                  →チラシPDFはこちらopenseminar2024

開催日時 2024年10月29日~11月26日 (毎週火曜日 全5回)
        17時00分-18時30分(開場 16時45分)

開催方法:会場参加かオンライン参加が選べるハイブリッド開催
●会場:明治学院大学横浜キャンパス (9号館2階 922教室)
●オンライン:Zoom Webinar

参加費無料

 

第1回 10/29 辻 信一(大岩 圭之助)
(明治学院大学名誉教授/文化人類学者)
グローバルからローカルへ
ー深まる危機の中の大学
【講演要旨】
辻先生は、明治学院大学国際学部の教員として、ゼミ生とともに20年間以上、舞岡公園で田んぼでの活動を続けた。横浜キャンパスに隣接しているにもかかわらず、舞岡公園に入ったことがある教職員・学生は5%以下ではないか。
国際学部の設立に関わった玉野井芳郎先生は、インターローカルという言葉を使っていた。地域と地域の「間」という意味だ。グローバリゼーションにばかり目がいくが、これからはローカリゼーションに目を向ける必要がある。具体的には、小規模農業、ローカルフード、リジェネラティブ農業、微生物に注目した大地のリジェネレーション、フォレスト・ガーデン、アグロフォレストリーなどで、ローカルとリジェネラティブの組み合わせが大切になってくる。上記を踏まえると、森と農を身近に体験できる舞岡公園は、国際学部にとって貴重な空間である。
消費主義への傾倒や自然との分離によって、多くの人々は地球とのつながりを失っている。しかし『植物と叡智の守り人』『マザーツリー』といった知見から見えてくるのは、人間中心(アンポロ・セントリック)や自己中心(エゴ・セントリック)の世界観から、キン・セントリック(つながり(あいだ)中心)の世界観への移行が求められているということだ。このためには、ローカル、コミューナル、エコロジカルという3要素に注目する必要がある。

第2回 11/5 中川 隆義
(元銀行員/里山活動家)
地域社会課題の解決に於ける大学の可能性
ー外部ステークホルダーの視点から
【講演要旨】
大手銀行に勤めていた際に中川さんが考えていたことは、「(銀行がハブとしてソーシャルに機能し)大企業が主体的に参画することで本格的な公民連携を加速させたい」ということで、まちづくりの分野で大学も巻き込んで活動してきた。横浜育ち、自然が好き、ソーシャルを原点として人生を考えたとき、「身近で愛着あるものを残したい」「地域社会に何かを為したい」という気づきから、舞岡公園のボランティアに関わるようになり、2021年にままmaiokaというチームを立ち上げた。2022年度からは毎年度、国際学部の授業でワークショップなどをしながら、舞岡公園と大学をつなぐことにも取り組んでいる。
昨今、大学キャンパスの都心回帰の傾向がみられる。明治学院大学が戸塚にあるメリットを地域の側が認識し、大学にとって学生の学びの場所として地域が重要だというだけでなく、地域の側も横浜キャンパスが無くなっては困るというような関係性を築いていくことが大切である。
1973年に発表された『横浜市基本構想及び横浜市総合計画1985』では、約60haの戸塚市民公園が構想されていた。しかし実際には20haが横浜キャンパスとなり、残りの40haが舞岡公園になった。50年の時を経て、「PARKnize!! キャンパスin 里山公園」をスローガンに、地域と大学が連携しながら、当初は一体であった横浜キャンパスと舞岡公園との境界線を越えやすくするところから始めてみてはどうか(たとえば、境界線にある柵の鍵を開ける)。
★講演動画の視聴は コチラ(2025年7月末まで視聴可能)
第3回 11/12 高橋 源一郎
(明治学院大学名誉教授/作家・評論家)
わたしの大学
【講演要旨】
ご自身の体験から、わたしの大学とは何であったかを語った。高橋先生にとっての「先生」は中学校のときの友人たちだったという。高橋先生がこのことに気づいたのはだいぶ経ってからだったが、自分がいかに無知であるかを知らしめてくれたのが彼らだった。学ぶということは知らないということを前提にしている。それゆえに、自身の無知に気づかせてくれるのが先生だと言える。
先生は、制度としての学校(大学)に必ずしもいるわけではない。むしろそのような場所にはほとんどいない。なぜなら、教え込もうとする人は先生ではないからだ。自分から学びたいと思えるようにしてくれる人が本当の先生である。先生はオーダーメイドで、それぞれの人が「わたしの先生」を見つけなければならない。どこでいつ出会えるかわからないが、一人先生を見つけられた人は、何人でもわたしの先生を見つけられるようになる。
今回の公開セミナーにひきつけて考えると、大学内で学ぶだけでは不十分で、学外に多様な学びの場を持っていることが重要だということになろう。横浜キャンパスがある戸塚という地域には多様な人々が住んでいる。学生が地域に出ていき、たくさんの「わたしの先生」を見つけることを期待されているのだと感じた。
★講演動画の視聴は コチラ(2025年7月末まで視聴可能)
第4回 11/19 勝俣 誠
(明治学院大学名誉教授/経済学者)
大学と一本の街路樹物語
ー伐られた大木はこうして復活した
【講演要旨】
勝俣先生がご自身で作詩した「一本の大木が伐られた日」や「伐られても、伐られても」の朗読を交えての講演で、2023年の夏に伐採された白金校舎正門前の大銀杏について考える機会となった。井深梶之助が「町の風致のため、伐採しない」という約束を取り付け、その後100年間手を付けられなかった銀杏。それがなぜ急に伐採されてしまったのか。勝俣先生はその理由を知るべく、多くの市民(日比谷公園の再開発を考える方々、神宮外苑のイチョウ並木を考える方々、杉並区のご神木を残そうとする方々など)とつながっていき、自動車中心、効率性優先や利便性優先、速度優先の社会規範に気づく。しかしこれからの社会で重要になるのは、「誰もが歩けるまちの風致型」モデルである。
横浜キャンパスの周辺には多くの緑が残されてきた。白金校舎の大銀杏伐採は、これらの緑をどのように活かし街を発展させていくかについて考えるきっかけになる。大銀杏伐採では大学内の動きがあまり見られなかった。景観や風致の保全、そして街づくりに大学が地域とどのように関わっていくのかが問われている。
なお、伐採された大銀杏から、ひこばえが出てきており、銀杏の生命力の強さを示している。
第5回 11/26 原 武史
(明治学院大学名誉教授/政治学者)
大学は地域とどう関わるべきか
ー付属研究所所長としての体験から
【講演要旨】
原先生が関わった公開セミナー(2008~2011年度と2015年度)を振り返りながら、明治学院大学の公開セミナーの意義を考えた。「国際」と「学際」をキーワードに、国家の壁だけでなく、学問の壁を打ち破れるような真の公開セミナーを目指した。当代一流の文化人を招き、「知」や「学」や「芸」の最先端を地域の方々に提供する。結果、多い時には700人を超える来場者があり、会場に入りきれない事態になった。
当時、戸塚駅と大学の間を往復する学生のマナーの悪さが問題になっていた。地域住民から愛される大学にするために、地域に向けて大学を広く開放し、大学のイメージアップを図るというのが公開セミナーが目指したものの一つだ。もう一つは大学の定義を広げることで、18~22歳までの学生しかいない大学ではない大学を目指した。地域の方々に、戸塚に大学があることに誇りをもってもらえるようになってほしかったという。
最後に、もしいま原先生が公開セミナーの登壇者を決められるとしたらどんな方々にお声がけするかについて語った。

    

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

問合せ先
 国際学部付属研究所  TEL. 045-863-2267 (受付時間:平日 10時-17時)
                                 Email: frontier(at)k.meijigakuin.ac.jp          ※ (at) は @ に置き換えて下さい.