出張報告

白石 渉

 

▼出張期間

2005年10月29日より2005年11月4日まで

▼出張先
ロンドン、オックスフォード
▼研究テーマ
イギリス・ドイツの金融構造の変化と特異性
▼調査の内容
1.テーマの背景
2005年10月に著書『金融のワンストップ・ショッピング』を上梓した。そこでは米国と日本における金融イノベーションの発展および
市場参加者の行動と法制度の関係という2つの視点から、総合金融グループ、とりわけ金融持株会社の形態に結実した両国の金融構造の変化と特異性を明らかにすることを目的とした。
今後の研究計画は同じ研究テーマのもとで対象国をヨーロッパ(イギリスおよびドイツとスイス)に拡大していくことであり、今回の調査はその第一歩としてイギリスを対象としたものである。

2.調査・訪問先
(1) London School of Economics (LSE) Professor Ron Andersonに面談
(2) Oxford University Business School
(3) Financial Services Authority (日本で言う金融庁に該当する官庁)
(4) LSE およびOxford University の書店にて参考文献の収集
(5) Cityおよびウオーターフロントの新興金融街

3.主な調査項目
(1)一国の経済主体(家計、企業、政府)の間の資金フローとそのストックは金融機関のバランスシートに反映されるので、それを分析することにより各国の金融構造は一様でないことがわかる。
(2)金融構造は長い時間軸で捉えた金融・資本市場の発展プロセス、法制度・規制体系の変遷、社会・経済の制度と慣行、経済主体の意識・行動等の違いに起因するものであり、まさに歴史的所産である。

London School of Economics Professor Ron Anderson (Financial & Accounting Department)
4.研究の仮説
日本は資金循環の面からはユニバーサルバンク制度を採用しているドイツ・スイス型に近いにもかかわらず米国型の金融持株会社制度を採用しており、金融構造に「ねじれ現象」がみられる。上記の(1)(2)を踏まえて日本の金融システム改革のインプリケーションとしたい。

▼発表予定の論文・著書等

日本金融学会、日本国際経済学会、日本経済証券学会のいずれかで報告し、その原本を本学の紀要に掲載したい。