出張報告

熊井 茂行

 

▼出張期間

2005年2月14日より2005年3月22日まで

▼出張先
メキシコ、グアテマラ、ホンデュラス、ペルー、ボリビア
▼研究テーマ
・インカ国家にかんする文書館史料の調査とインカ遺跡(ウルピカンチャ遺跡)発掘の事前準備
・先スペイン期の王権の比較研究(インカとマヤ)
▼調査の内容
中央アンデス先スペイン期に形成されたインカ国家について、2003年から徳江佐和子(明治学院大学非常勤講師)と共同でその領域の全域にわたってインカ遺跡の広域調査をおこなってきた。これは、インカ国家像の再構成を、これまでの研究にみられた特定の地域や特定の立場に依拠するものではなく、みずからの実地調査によってインカ国家の全体を視野にいれておこなうための、基礎調査であった。今回おこなったボリビア領チチカカ湖の「太陽の島」のインカ遺跡調査をもって、不十分ではあるが、この広域調査にいちおうの区切りをつけた。
聖なる岩(太陽の島,ボリビア)
2005年度からは3年計画でインカ国家の首都クスコ郊外にあるウルビカンチャの調査・発掘にとりかかる。ウルピカンチャは、インカ国家の最後の王(になりそこねた)ワスカルの別荘があったとされるところで、神殿・宮殿とみられる建造物、広場と段々畑などが比較的よい保存状態でのこされている。また、周辺には、インカ期の遺跡とともに、それ以前のたとえばワリの広大な遺跡があり、これらとの関連で、クスコ地方の先スペイン期の編年を再検討するための資料がえられることが期待される。また、ワスカルとその領地についての歴史史料の調査も必要である。今回は、なかでも発掘のための事前準備と関係官庁などとの交渉とをおこない、今年8月からの発掘の了解をえた。

発掘予定地ウルビカンチャ (クスコ・ペルー)

 インカ国家の理解のためには、先スペイン期アメリカ大陸における諸王権の比較研究も重要である。今回はその準備の一環として、メソアメリカの主要なマヤ遺跡を調査し、あわせて資料を収集した。

パレンケ(メキシコ)
ティカル(グアテマラ)

 

 

▼発表予定の論文・著書等

・インカ遺跡の広域調査については、2003年度と2004年度の調査をまとめた報告をちかく発表予定である。
・インカ国家末期のインカ王とその王権、そしてスペイン人の侵略をゆるしたインカ国家における王権のあり方について論文を準備中である。